―リカちゃん・・・―
その響きに、素早く俺の耳ともう一人の息子がピクリと反応する。
ええい、静まれ、静まれい!今はまだ夕方、「お人よしで真面目なマスオさん」の顔でいるべき時間だ。
「リカちゃんとすべり台で遊んで楽しかったです」
「へー、それは良かったね」
なんて陳腐な返事をしつつ、心の中の俺はもう尋常じゃいられない。
すべり台の上にのぼるリカちゃんの赤いスカート(イメージ)からチラチラ覗く白いパンティ。
スカートを押さえながらすべる(萌え)リカちゃんの柔らかなお尻とすべり台が擦れ合い、きゅっきゅと
僅かながらもなんとも甘美な響きを奏でるのだ・・・。ああ、すべり台になりてぇ・・・・!

「パパ、パパ?聞いてるですか?」
―おっと、いけない。妄想が行き過ぎた。
「ああ、ごめんね。ちょっと疲れちゃったからね。でもちゃんと聞いてるよ」
「パパ、昨日もそう言ってたです」
「あれ?そうだっけ?あはは、でもほらっ」
俺はタラちゃんを軽やかに抱き上げ、肩に乗せた。
「わぁい、肩車です〜♪」
「ほぉら、パパはこんなに元気だよ。タラちゃんが元気だとパパも元気になれるよ〜」
「マスオさんたら、あんまり無理しなくていいのに」
あははははは―俺とサザエ、そしてタラちゃんの愉快な笑い声が響く。
ハタから見れば、絵に描いたように平和で理想的な家庭だろう。
しかしこれもすべて、俺が本性を隠しているからこそ保たれている虚構に過ぎない。
妻も子供も可愛いし、磯野家の人々も優しくて、何の不満もない。
もしも俺が表の顔通りの人間ならば、この幸せに狂いは無かっただろう。
けれど人生、そう都合の良い事ばかりではない。
俺はいつも己に潜む邪悪な欲望と戦い続けている。それが俺に課せられた試練。


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