甚六の死を背負い、タラオへの怒りはより強いものとなった。

自分を慕っていた甚六にまさかあんな仕打ちをするなんて、タラオはもはや、人間ではない。
ならばこちらも、相応に意識を変えねばなるまい。

イクオは自分の甘さを責めながら、一歩一歩を踏みしめた。

「甚シックスさんのインフォメーションによりますと、プロバブリーここからニアーなはずですが…」

今更英会話を意識し出したらしいタマが言うと、イクオの顔がいっそう歪む。
それが怒りによるものなのか悲しみによるものなのかは、判別がつかない。
おそらくその両方だろう。

「ワカメちゃん、タマ、…殺す気でいくよ」

イクオは静かに呟いた。




その様子を、タラオが暗視望遠レンズで観察していた。
窓にかけられたブラインドの隙間から、外が見えるように設置されているのだ。

「ふ、ははは…タマの言った通りだ…。
ほんとに来た…ははははっ、馬鹿なヤツ…」

ドライマティーニを一口含み、なお楽しそうに笑う。
タラオはかつての親友、イクラもといイクオをその手で潰せることに、
この上ない喜びを感じているのだった。

「俺に、カンパーイ…」

グラスは、鏡のようにタラオの姿を映し出しているガラス窓に当たり、鈍い音をたてた。


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