「ここか」

そこは一見何の変哲も無い、真新しい一戸建てのように見受けられた。
外観は至ってシンプルで生活観が無く、そのまま小さなオフィスとしても使えそうだ。


「ほう、タラオはこんなところに住んでいるのか…」

ワカメが感慨深げに呟く。

イクオは深呼吸をし、計画の一部始終を頭に浮かべた。

まずタオルで厳重に防音し、バーナーと冷却スプレーで窓を割って、警鐘が鳴らないようなら鍵を開け室内に入り込む。
そして寝室(二階にあるそうだ)に進入し、寝ているタラオの口を塞ぎ。身動きを封じたのち、
ワカメに延々と説得をしてもらう、というものだ。
もちろん『魚一番鬼』には今後一切関わらない、といった内容の誓約書に押印をもらうまで拘束をやめない。

最初は心苦しく思っていたイクオだったが、こうなってしまった現在、そんなことは言っていられない。

…よし、行くぞ。

「ウェル……ウィンドウ イズ、ゼアー」

暗闇で目の利くタマの案内にしたがって、忍び足で家の裏に回りこむ。

「よし、割ろう…うまくいきますように…」

イクオの心配をよそに、窓は音も無く簡単に割れた。
幸いセコムはついていなかったようだ。

こんな簡単に割れていいのか、Y●Kはなにをやっているんだ…。
さまざまな思いがめぐる。

「ヒア ウィー ゴーしましょう。覚悟はオールレディ オーケイですか?」

タマの問いかけに、二人は無言でうなずいた。


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