寝室のドアは、二階の細長い廊下の最奥に位置していた。
息を殺してノブを探すイクオの手元を、ワカメが後ろから照らす。

ようやく見つけたノブをゆっくりと回すと、小さな音がしてドアが開いた。

「…開いた…!」

暗闇のなか、目を走らせる。
目が慣れると、ほの暗い月明かりで家具のだいたいの位置と部屋の間取りがつかめた。
イクオは窓辺に置かれているベッドに静かに近づき、
そっと布団をめくった。

「…いない…!?」

誰かが横たわっているように見えたベッドは、特大のテディベアに頭から布団をかけたものだった。
明らかに人為的…
罠…?

「あははははは、何やってるの、イ・ク・ラ・ちゃん」

背後でいきなり大声を出され、イクオの背筋が凍りつく。
振り返るとそこには、タラオが立っていた。

月にぼんやりとかかっていた雲が晴れたらしい。
両耳にピアス、黒いタンクトップから出た細い腕には魚雷の刺青をしているタラオの姿が、はっきりと見て取れる。

そしてその隣には、ニヤリと笑うタマの姿があった。

「タマ……!」
「貴様!謀ったな!」
イクオとワカメが同時に声を上げる。

まさかスパイがタマだったなんて…!

じゃあタラオに甚六のことを告発したのも…。
イクオは歯噛みをした。


何もかも甘すぎたんだ、僕が…!

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