「姉さん、ただいま。
こちらは、仕事仲間のイクオだ。
イクオ、挨拶を」
「は…、はじめまして…」
「ん?ははは、全く姉さんは、いい男には目がないな…
そうだな、ああ、仕事は上々だった…
ロスが少し、出たかな…」
ワカメは週二回、朝9時から昼3時までお刺身の上にひたすらタンポポを乗せ続けるという過酷な仕事をしている。
「そうだ…タンポポが3枚ほど、ベルトコンベアに巻き込まれて…」
「ねえ、ワカメちゃん、あの…
非常に言いづらいんだけれども…」
「なんだ、突然」
「この…水槽の中に入ってるこれは、あれだよね…
あの、人間ではないよね。
まずあのー…、サザエさんでは、ないよね?」
イクオは控え目に、テーブルに乗せられた水槽を指差す。
中には砂とゴツゴツした貝…おそらくサザエ…が入っている。
ワカメはイクオの言わんとしていることを理解したかのように渋い顔でため息をつき、その肩に手を乗せた。
「…イクオ、これが現実だ」
「えええ!だって!
これはさすがにない!ないよ?!
貝じゃん、か、貝じゃん!
だって喋んないじゃん!泡ふいてるよーほら!!
わ、ワカメちゃん!なんで目を反らすの?!
現実を!ほら!見て!」
「…イクオ、我々の姉さんなんだ、悪く言うな」
その時、貝がカサカサと動いた。
よく見ると、茶色い足が見え隠れしている。
イクオは目を見開いて、しっかりとその物体を捉えた。
「貝じゃなーーーーい!!?
ヤドカリじゃん!ねえ、ヤドカリ、これ!ねえ!
ワカメちゃん、これサザエですらなかった!!
寄生、寄生されてるよ!ねえ!」
「イクオにはまだ、荷が重すぎたか…」
「何言ってんのワカメちゃん?!」
その様子を、一匹のメンズが見つめていた。
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