「ワカメ、父さんが呼んでるわよ」

ワカメは襖越しに聞こえたサザエの声にイクラの如くハーイと無機質な返事をする。

ワカメももうすぐ中学生。
一家の長・波平の方針のもと、小遣いは交渉次第で、一対一のお小遣い交渉は波平の部屋で行われる決まりになっている。
中高生にとって小遣いの額とは青春の明暗を分かつ岐路‥!魂の分水嶺‥!
自らの運命を定める日とも言える瞬間が、ワカメに訪れたのだ‥!

「せいぜい上手くやれよ、ワカメ。俺なんて交渉術を駆使して月8000円も貰ってるぜ」

ワカメは兄・カツオの自慢を胸中で反芻しながら静かに立ち上がる、思えばここ数年、ワカメは最悪だった。
父・母・姉・兄に使い走らされ‥自分の都合は無視され‥雀の涙程度の貯金は甥の誕生日に費え‥
家族の自慢・愚痴を聞かされる‥

そんなしょぼい毎日からの脱却‥!

ワカメは心に決めていた‥
全てを変えてやるっ‥!
もっと価値のある毎日を‥手に入れるっ‥!
高まる鼓動を感じながら歩き
波平の部屋に着くと、そのまま部屋に通される。

「ワカメ、座りなさい」

促されて座ると、対面したのは見知った祖父ではなかった‥!

金の亡者‥!閻魔大王‥!

血走った眼は
「貴様などに金はびた一文やらぬ!」
そう語っている。

普段の態度からは想像できないその威圧感‥!存在感‥!
無意識に固唾を飲み込むのも致し方のないことだった。

ワカメはこの日に備えて行なった下準備が無駄にならないことだけを祈るのであった‥


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