そんな出来事があった週末、母と二人で出かけたデパートでは
浴衣の展示会が開催されいた。横目で見ているワカメに
「ワカメも、もう14歳だし、少しお姉さんらしい浴衣を買ってあげようか?」
と母が言った。迷っているワカメに、母が見立ててくれたのが、今着ている浴衣だ。
「ワカメお姉ちゃん、可愛いですう!」
着付けを終えたワカメに、甚平姿のタラオがが言った。
「ありがとう、タラちゃん。」
ワカメは待ち合わせ時間に間に合うように、家を出た。
家の門を出ると、ワカメは密かに買った、色付きリップを塗った。
中学に着くと、既に堀川は到着しており、校門にもたれていた。
「あ、ワカメちゃん!」
堀川はワカメに気付くと、オーバーアクション気味に両腕を振った。
見慣れたはずの、堀川の私服にドキドキしてしまうのは、
きっと初めて二人きりで出かけるせいなのだろう。
ワカメと堀川は、他愛もない会話をしながら、山車や屋台を見て歩いた。
射的や金魚すくいをしてはしゃぐ堀川の横で、ワカメは泣きそうだった。
新しい浴衣を着てきたのに、堀川は何も言ってくれない…。
おまけに、慣れない下駄のせいで、足が擦れて痛くてたまらないし…。
「ワカメちゃん、どうしたの?疲れた?少し座って休む?」
ワカメと堀川は、コンビニで冷たいジュースと線香花火を買って
神社の境内で休む事にした。祭囃子や人の賑やかな声が
聞こえてくるが、回りには人の気配はない。
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