−古い写真を見ながらバーボンを一気に飲み干した
空いたグラスに疲れた顔が映っている
スナックを始めてもう6年がたつ
12年前、夫のノリスケが自殺した時から私の人生は一変した
いいえ…自殺と言うのは表向きだけのこと
自殺ではなく他殺、犯人も知ってる
私はサザエさんの夫のマスオさんと12年前から現在進行形で不倫関係にある
ノリスケを殺したのはマスオさんでまず間違いない
ノリスケが死ぬ一週間前のこと、マスオさんは会社の同僚から温泉バスツアーの券をもらったのだとサザエさんに渡したのだそうだ
私と行くようにと
そしてそのバスツアーの日は丁度、ノリスケが死んだ日
私も最初は自殺だと思っていた
そう思いたかっただけかもしれない
ノリスケが死んで一週間後に、不謹慎ながら私はマスオさんに抱かれた
その時、マスオさんの身体から微かにニオイがしたのだ
ノリスケの死体と同じニオイが
信じたくなかったが私はマスオさんの身辺を探った
そして見つけた
携帯灰皿の中から出てきたカプセル錠
ノリスケを死にいたらしめた青酸カリを
最初のうちこそマスオさんに抱かれることを汚らわしく思ったがそのうちになんとも思わなくなった
むしろノリスケを殺してくれてありがとう、と感謝の気持ちすら芽生えた
そもそも私がマスオさんと不倫するようになったのはノリスケとのいざこざがあったからだ
イクラが生まれてからずっとセックスレスで私は毎日寂しい思いをしていた
ノリスケは外面だけはよかったが酒癖が悪く家では私に暴力をふるうことも少なくはなかった
ただ、イクラには過剰すぎるほど愛情を注ぎ可愛がっていた イクラもまたノリスケが大好きだったのだ
ノリスケが死んでからというもの、イクラは毎日のように泣いていた
そして恐らく知っていた
自殺ではないことを
あの子には鋭い洞察力がある

私がスナックを始めたキッカケはただ単純にノリスケの保険金が底をつきたから
当時私にはマスオさんの他に十数人もの不倫相手がいた
その中の年下のお気に入りの男に貢ぎまくったせいであっという間に金は底をついた
生活費とイクラの養育費を稼ぐためにいくつもバイトやパートをかけもちして死に物狂いで働いたが身体を壊しそれが厳しくなった
ノリスケが死んでから6年がたったある日、パート先で知り合った奥さんがスナックをやってみる気はないかと話をもちかけてきた
聞くところによるとその奥さんの母親がスナックのママをやっていたのだがもう歳なので引退するということで別の経営者を探しているところだったのだ
財界の人間が集まるスナックと有名だったらしく私はみるみるうちに金持ちになった
もちろん客のほとんどは前のママの人柄で集まってきた人ばかりだったが私も逃してはなるまいとあらゆる努力をした


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