私は自然と家をあけることが多くなり、イクラとろくに会話もしなくなった
我が子を養っていくため、守っていくために始めた仕事なのにそれが親子の絆を切ってしまうナイフになるとは皮肉なものだ
今の私には一体何があるのだろう…
グラスにもう一杯バーボンを注ぎまた一気に飲み干す
侘しい
今でもマスオさんとは肉体関係が続いているものの、どこか満たされない
そう、マスオさんが本当に愛しているのは今も昔も変わらない
妻のサザエさんだけなのだから
夫を失い、我が子を失った今、私には何一つ確かなものはない
あるのは不確かな愛情だけだ
またグラスに手をかけた時、携帯の着信音が鳴った
イクラだ
曲はノリスケが好きだったXJapanのRustyNail
I can die, I can live
I can die to set me free
Day and Night, Night and Day
I wanna live to set me free
I can die, I can live
I can die to set me free
Day and Night, Night and Day
I wanna live to set me free
｢もしもし、タイコ。超マジやべぇことが起こったんだよ。
今からスナック行っていいか？｣
やっぱりか
イクラが私に連絡してくるといったら頼み事をするときぐらいだ
｢いいわよ。お客さんいないし今日はもうお店閉めるわ。
一体何があったのよ｣
｢詳しいことはそっちで話す。じゃあな｣
電話が切れた
胸が騒ぐ
イクラは何を仕出かしたのだろう
