俺の名はフグ田マスオ。海山商事勤務の28歳。ごく普通のサラリーマンだ。
「マスオさん、今日もお疲れさま」
そう言って俺のスーツを手に取っているのは、妻のサザエ。
少々そそっかしい所もあるが、愛嬌があってなかなか可愛い奴だ。
「お夕飯はマスオさんの好きなハンバーグよ」
「おっ、ありがとう。ちょうどハンバーグが食べたいと思っていたんだ。サザエは気が利くなぁ」
「あら、うふふ」
ちょうどそこに、ガラガラと襖が開く音がした。
「パパー、お帰りなさいです」
「タラちゃん」
このどんぐり眼の愛らしい男の子が、一人息子のタラオ。
タラちゃんは誰に似たのか、素直でお利巧な良い子に育ってくれている。
「マスオさんに似たんじゃない?」なんてサザエは言うけど、それは断じてありえない。
くくく、皆本当の俺を知らないからな。本当に、誰に似たんだろうねぇ・・・。
「今日はイクラちゃんに絵本を読んであげたです」
「そうかそうか、タラちゃんもすっかりお兄さんという感じだねぇ」
タラちゃんは俺にすがりつくようにして今日の出来事を話し続ける。実に無邪気で可愛らしい。
こんな可愛い子宝に恵まれて、本当の自分を隠す虚無感にも勝る幸せだ。
ああそれなのに俺は、なんて罪深い男なんだろう・・・もし自分の父親の本当の姿を知れば、
タラちゃんの太陽のような笑顔も一瞬にして壊れてしまうだろう。
「その後公園でリカちゃんに会ったです」


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