一通り吐き終わって、俺は顔をあげ、レバーを引いた。
気がつくと、穴子がそばに来て、俺の背中をさすっていた。
「さ、さわるなっ!」
俺はその手を払いのけた。
今日一緒に笑いながら乾杯したビールグラスを持っていたその手が、
こんなにも汚らわしく思えるようになるとは・・・―
「マ、マスオ・・・」
「お前な、気持ち悪いねんホンマに!マスオ言うな!鳥肌立つわ!!
あと今日でお前との友情は終わりや。職場でも話しかけてくんなよ!ええな!」
俺は思うがままの言葉を声に出して叫んだ。
いつも標準語を使うように気をつけているが、そんな余裕はなく、お国の言葉丸出しになった。
「・・・・・・・・」
穴子は俺の剣幕に圧倒されている様子だ。
それもそうだろう。普段の大人しい表の顔の俺からは、関西弁で怒鳴り散らす姿なんて
自分でも想像がつかない。
俺はなんとなく決まりが悪くなって、ベッドの横に置いてあったカバンを持つと、
「胸糞悪いわホンマ・・・」
という捨て台詞を残して、そそくさと部屋を出て行った。
ホテルを出てみるとそこはラブホ街だった。見たことも無い風景だ。
俺はむしゃくしゃして行くあてもなく歩き続けた。
適当に歩いているとタクシーが通りかかったのでつかまえて、駅まで送ってもらい、
それから電車に乗って家に帰った。
もう終電ギリギリという時間だった。
サザエ・・・タラちゃんともう寝ちゃっただろうけど、怒ってただろうな・・・。


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