「おはよーございます」
掃除のため毎日一番に出勤するが、今日は誰か来ているみたいだ。
ついたてで仕切られた店長の机のところから声がする。

「寂しくなるっていうか頼りに出来る人がいなくなるなぁ〜あと2ヶ月くらいは平気なんだろ?」
「そっすね…向こうの研修がいつからになるかって感じですけど…」
店長と…中島くんだ。

「でもここで4年も頑張ってくれた中島くんなら就職してもきっといい仕事できるね。頑張って」
「今までありがとうございました。残り少ないですけどこっちのバイトも頑張ります」

中島くん…辞めちゃうんだ。

「早川さんおはよう」
「おはよう…中島くん就職決まったんだ。おめでとう」
「あはは聞こえた?どーしても入りたかったゲーム会社からついに内定来てさ。これでじいちゃん安心させられるよ」

中島くんが大学辞めてフリーターって聞いたとき、ダメ人間仲間が出来たと思って安心した。
周りがリア充だらけだったから。
でもいざ同じバイトをしてみると全然デキル男で、夢に向かって頑張ってた。やはり私とは違う人種だったのだ。

「他の人よりスタートが遅い分頑張らなきゃなー。磯野みたいなエリートとは違うしね」
中島くんが辞めたらまた独りになる。出来ない私をフォローしてくれる人がいなくなる…


「辞める?!どうして」
店長は驚いた顔で私を見た。
「あ…あの…やりたいことが…見つかって…なんていうか…」
バレバレの嘘をついた。自分でも目が泳いでいるのがわかる。
「そんな急に言われてもなー。年末に向けてさらに人募集してるの知ってるよね?週3とかでも無理?」
中島くんが辞めるから辞めるなんて、アホらしい。ここ辞めて他の職場に行ったって同じなのに。

「ちょっと考えさせてください…」

家に帰り布団に潜った。私なにやってるんだろう。あの店辞めるならまたバイト探さなきゃならないのに…
カオリから貰ったクリームが床に転がっていた。
私がカオリなら…中島くんと同じ会社に入って…ずっと守ってもらえるかな。


「あー早川さん。ちょっと」
翌日バイトに行くといきなり店長に呼ばれた。
「昨日の話しだけど、大丈夫だよ。今月で退職ってことになったから。エプロンは洗濯して返してくれればいいから」
「え…?」
「え?やりたいことが見つかったんでしょ?」
「そうなんですけど…あ、ハイ。わかりました…」

どうしよう。ほんとに辞めることになるなんて…中島くんを送り出す前に自分が辞めるなんて。

「早川さん辞めちゃうの?」
「中島くん!あー…お世話になりました」
作り笑いでごまかしてみる。ふと涙らしきものが頬を伝った


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