イクオが『魚一番鬼』のトップだとは知らない甚六から『魚雷男爵』及びタラオの情報を聞き出したイクオたちは、
より具体的な戦略を練るための話し合いを始めた。
もっとも甚六は『魚雷男爵』の中でも地位が低いと見え、目ぼしい情報を引き出すことは出来なかったのだが。
「姉さん、それはどうだろうか…
敵に針を仕込んだおはぎを送りつけるだなんて…
そんな、お中元じゃあるまいし…なあイクオ?」
イクオは考える。
肉弾戦に持ち込むつもりはないのだ。
ただ、タラオの戦意を喪失させることだけが重要なのである。
「敵が無用心にしている時間帯を狙う必要がありますね」
タマが考え深げに発言すると、イクオもうなずいて考え込む。
「…そうだね、ワカメちゃんに説得してもらうにしても、
周りにタラちゃんの仲間がいないほうが何かと都合がいいだろうし」
「そうすると…夜、ということになりますね」
「うん、ほんとは今晩にでも実行したいんだけど」
「焦りは禁物ですイクオさん。ここは慎重にいきましょう」
「分かった。…タマ、ありがとね。僕の肩をもってくれて」
すっかり眼鏡スーツ男子、タマと打ち解けたイクオは、微笑んで礼を言った。
「いいえ、お礼には及びません。
私はイクオさんの総長としての平和主義的思想に感銘を受けた、ただそれだけです」
「タマ…」
タマは照れたように笑い、すっと立ち上がった。
「すみませんイクオさん。そろそろ英会話のレッソンに行かなくては」
「あ…へえ、うん、がんばって…。発音いいね」
「では、失礼します」
「気をつけてね」
タマは笑顔で磯野家を後にした。
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