あたしとお兄ちゃんは、タクシーで病院へ向かうことにした。
タクシーを呼ぼうと、電話の受話器を取る。


……タラちゃんの好きな鮭を……



「た…タラちゃん…」

あたしは思いきってタラちゃんとリカちゃんの部屋の襖越しに呼び掛ける。

「タラちゃん…、起きてる?」




中からはいやらしい声が聞こえるだけだった…。
タラちゃん…その女は…


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タクシーから降りると、そこは古びた病院だった。
姉さんはまだ興奮状態だった為、鍵付きの部屋に入れられているらしい。

「カツオくん!ワカメちゃん!」

タイコおばさんとイクラちゃんがいた。

「ワカメ姉ちゃん…。」
「タイコおばさんには連絡したんだ。姉さんも、タイコおばさんのことならわかるかも知れないだろ」
「…マスオ兄さんは?」
「…つかまらないよ…クソッ!こんな時に…」

マスオ兄さんは優しい人だった。
だけど気が弱く、大黒柱にはなれない人だった。
だから、家がこんなことになってからはマスオ兄さんの居場所はなくなり、
家に寄り付かない、会社人間になってしまった。

気まずい沈黙。
誰を責めることもしたくないのに…。
口火を切ったのは、イクラちゃんだった。


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