「…タラ兄…もういいよ…、もういいから…」
「……………」

うなだれ震えるタラちゃんの肩を抱き、廊下へ誘導し襖を静かに閉めた。
暖色の照明の下で
久々にタラちゃんを見た。
眩しそうに目を伏せている。
何かに怯えるように…。
髪の毛はだいぶ伸び、血色も悪く、無精髭が生えている。
リカちゃんと結婚した頃のタラちゃんとは、まるで別人だ。
「……タラ兄…、もう終わりにしよう」


イクラちゃんは知っていたの…?
すべてを…
すべてを知って…
なのに…なのに…

「―――て…」
「…ワカメ姉ちゃん?」
「…イクラちゃんどうして…っ?!」

あたしは崩壊していくお城の中にいるようだった。
磯野家、フグ田家、波野家、
すべての家の円満だった関係が脆く崩れていく。


「…俺とタラ兄だぜ…?
昔から、本当の兄弟みたく育ってきたんだ。
タラ兄の苦しみは、俺の苦しみだ」

イクラちゃんは続けた。

「タラ兄は自分が子供ができない身体だって知っていたんだ。 だから…この女を…
この女を親父に抱かせたんだ。」
「………!!」

手玉に取っていたつもりが、
自分が利用されていたと気付いたリカちゃんの肩がビクッと揺れた。

「親父が、浮気していたことを俺は気付いてた。
母さんもね…。家はもう冷えきってた。いっそ早く壊れて欲しかったよ。
だから、親父とこの女が出会うように仕組んだんだ。
若い女が好きな親父と
ブランドと金が好きなアンタがね」


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