母さんは7年前死んだ。
タラちゃんが裏のおじいちゃんに暴行し、少年院に入ったときに体調を崩し、
そのまま還らぬ人になったのだ。

あたしは母さんと、鬱病になった姉さんの代わりに家事をこなし、
父さんやお兄ちゃんたちの世話をし、勉強との両立…。
こんな環境で、どうしたら恋愛なんて出来ただろう。
……なんて、言い訳だよね…。
食器棚のガラスに映る地味な自分の姿を見て
心まで醜くなってる自分が悲しかった。
こんな女、誰も好きになってくれないよね…。



「ワカメオバチャァァン。オラお腹空いたぞぉ」
「好海くん…」
「オツヤオツヤ〜!!ヒューヒュー!」

好海くんは意味不明な奇声を発する。
天然の茶色い髪の毛に色白の肌。
年の割には小さな背丈。
見た目は可愛いのだが、可愛がろうという気が起こらない。
あたしには母性が足りないのだろうか。

「す、好海くん、こんな時間にお菓子なんて食べたら、ママに怒られちゃうんじゃないかしら?」
「オバチャンのおケチ〜!!おケチおケチ!」


…しつけ出来ないなら産まないで欲しい…。
このワガママな意味不明な言葉を発する子供…全然かわいいと思えな…



そこまで思ってハッっとした。
好海くんは誰かに似てる。
見た目、ワガママな振舞い…
何よりあたしが感じるこの感覚。





イクラちゃん…。
そう。イクラちゃんに似てるのだ。


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